グラフィックカードの構造
ディスプレイ表示を行うための拡張カードのことをグラフィックカードといいます。
ここではグラフィックカードと呼んでいますが、メーカー、書籍、ウェブサイトによって、グラフィックカードに対する呼び方が異なることがあります。少なくとも以下のような呼び方があります。
- グラフィックカード
- グラフィックボード
- グラフィックアクセラレータ
- ビデオカード
- ビデオボード
- ビデオアクセラレータ
- VGAカード
ディスプレイの画質は、ディスプレイ自身の性能とグラフィックカードの性能とによって決まります。
グラフィックカードは、主にビデオチップ、ビデオメモリ、RAMDACからなります。 これらの性能によって、ディスプレイに表示できる解像度、色数、リフレッシュレート等が決まります。
グラフィックチップ(GPU)
グラフィックカード全体を制御する部品がグラフィックチップです。ビデオチップとも呼ばれます。最近ではGPU(Graphic Processing Unit)と呼ばれることが多くなりました。
グラフィックチップは、CPUから送られてくる描画データを制御し、そのデータをビデオメモリに送ります。
最近のグラフィックチップは、グラフィック描画やカーソル表示などの描画処理をグラフィックチップ自身で行います。 これにより、CPUの負担が軽減されます。この機能をグラフィックチップのグラフィックアクセラレータ機能といいます。
グラフィックメモリ
グラフィックメモリは、ディスプレイに表示される映像データを記憶する装置です。
グラフィックメモリは、ビデオメモリ、VRAM(Video RAM)などと呼ばれることもあります。 グラフィックメモリとしては、SDRAM、SGRAM(Synchronous Graphics RAM)、DDR SDRAMを利用することが多いです。
グラフィックメモリの容量によって、ディスプレイで表示できる解像度と色数が決まります。 それらの関係は次の表のようになります。
解像度/メモリ容量 | 2MB | 4MB | 8MB | 16MB |
---|---|---|---|---|
640×480(VGA) | 1677万色 | 1677万色 | 1677万色 | 1677万色 |
800×600(SVGA) | 1677万色 | 1677万色 | 1677万色 | 1677万色 |
1024×768(XGA) | 65,536色 | 1677万色 | 1677万色 | 1677万色 |
1280×1024(SXGA) | 256色 | 65,536色 | 1677万色 | 1677万色 |
1600×1200(UXGA) | 256色 | 65,536色 | 1677万色 | 1677万色 |
2048×1536(QXGA) | 16色 | 256色 | 65,536色 | 1677万色 |
RAMDAC
一般に、デジタル信号をアナログ信号に変換する装置のことをDAC(Digital to Analog Converter)といいます。 特に、グラフィック用のDACをRAMDAC(Random Access Memory Digital to Analog Converter)といいます。
RAMDACは、グラフィックメモリに蓄えられたデジタルの映像データをディスプレイ用のアナログRGB信号に変換します。
ちなみに、RAMDACのRAMは、グラフィックメモリのRAMではなく、 RAMDACに内蔵されているカラーパレットと呼ばれるRAMのことを意味するようです。
AGPとPCI Express
現在(2005年3月26日時点)、グラフィックカード専用のインターフェースはAGPとPCI Expressが主流です。今後はPCI Expressへと移行するといわれています。
PCI Express対応のグラフィックカードをAGP対応のスロットに差すことはできません。また逆に、AGP対応のグラフィックカードをPCI Express対応のスロットに差すこともできません。
パソコンを自作するにあたっては、パーツを購入するとき、グラフィックカードだけでなく、マザーボードについてもPCI Express対応かAGP対応かをあらかじめ確認する必要があります。同じインターフェースに対応しているものどうしを組み合わせないと、マザーボード上のスロットにグラフィックカードが装着できないという事態になります。
デュアルディスプレイ
デュアルディスプレイとは、1台のコンピュータから2台のディスプレイに対してビデオ出力を行なう機能です。
デュアルディスプレイには主に2通りの表示方法があります。
一つは、クローン表示です。2台のディスプレイに同じ画面を表示させます。例えば、プレゼンテーションのときに、一方の画面を聞き手に見せ、もう一方の画面を自分の確認用とするような使い方ができます。
もう一つは、マルチディスプレイ表示です。2台のディスプレイの画面は別々で、2つ貼り合わせると1つの大きな画面になるように表示させます。マウスのカーソルを左から右に動かすと、左側のモニタから連続的に右側のモニタに移動する、といったイメージです。例えば、片方に資料を表示し、もう片方にWordやExcelを開いて編集する、という使い方ができます。
デュアルディスプレイを実現する際、グラフィックカードを2枚使用する方法と、ビデオ出力が2系統あるグラフィックカードを使用する方法があります。
NVIDIA SLI
NVIDIA SLI(Scalable Link Interface)とは、NVIDIA社が開発したグラフィック機能に関する技術です。1台のディスプレイに映像を出力するときに、本来は1枚のところを2枚のグラフィックカードを使用することにより、並列処理を行ってグラフィックの性能を強化するというものです。
GPU(Graphics Processing Unit)間のデータ転送を高速化するために、SLI対応のグラフィックカードには専用のインターフェースが用意されています。2枚のグラフィックカードをパソコンの内部で専用のアダプタによって橋渡しをするように接続します。これにより、GPU間の転送ができるようになります。
SLI機能を利用するためには、SLIに対応した同じグラフィックカード製品を組み合わせる必要があります。
CrossFire
CrossFireとは、ATI社が開発したグラフィック機能に関する技術です。2枚のグラフィックカードを使用することにより、並列処理を行ってグラフィックの性能を強化します。NVIDIA社のSLIに対抗する位置づけとなる技術です。
CrossFireでは、2枚のグラフィックカードはマスターとスレーブとに区別されます。マスターのグラフィックカードとしては、CrossFireコントローラを実装したものを用意する必要があります。そのような製品は「CrossFire Edition」と記されています。スレーブのグラフィックカードとしては、「CrossFire Ready」と記された製品を使用する必要があります。
まとめると、CrossFire技術を利用するためには、以下のものが必要になります。
- CrossFireに対応したチップセットを搭載するマザーボード
- マスターとなる、CrossFire Editionのグラフィックカード
- スレーブとなる、CrossFire Readyのグラフィックカード
2枚のグラフィックカードが必ずしも同一メーカーでなくてもよい点や、グレードの異なるGPUを搭載したカード同士も組み合わせ可能である点は、NVIDIA SLIよりも柔軟であるといえます。
CrossFireでは、2枚のグラフィックカードをパソコンの外部で専用のケーブルを使って接続します。ケーブルの一方はマスターのグラフィックカードにある専用のコネクタに接続します。もう一方は二股に分かれており、それぞれスレーブのグラフィックカードのDVI-IコネクタとディスプレイのDVI-Iコネクタに接続します。
DirectX
DirectX(ダイレクトエックス)とは、マイクロソフト社が開発した、マルチメディア用のAPI(Application Programming Interface)のことです。APIとは、アプリケーションがOSやハードウェアの機能を呼び出すときに利用される命令の集まりです。
現在(2005年3月26日時点)、DirectXは、主にDirectX Graphics、DirectSound、DirectMusic、DirectPlay、DirectInput、DirectShowなどのAPIから構成されています。
DirectXを構成する主なAPI | 提供される主な機能 |
---|---|
DirectX Graphics | 2次元および3次元のグラフィックス。DirectX 8.0においてDirect3D(3次元グラフィックス)とDirectDraw(2次元グラフィックス)が統合されてDirectX Graphicsになる |
DirectSound | 音声の再生 |
DirectMusic | MIDIデータの再生 |
DirectPlay | ネットワーク対戦ゲームのサポート |
DirectInput | ジョイスティックなどの入力装置のサポート |
DirectShow | 映像や音楽のストリーミング再生。旧ActiveMovie |